■アカデミック・ポートフォリオ作成のすすめ
「価値観」と「ミッション」を明確化させた上で,具体的な到達目標を設定する作業
「価値観」と「ミッション」の明確化が大事とはいっても,これってなかなか大変な作業です。道しるべもないまま独りでうんうん考えていてもドツボにはまりかねません。また,誰しも日々のことで忙しいので,「見通しの立たない,いつ終わるかわからない作業」にはうかつに手を出せないでしょう。
どこから手を付けたものやら…という方には,「アカデミック・ポートフォリオ」を作成してみることをおすすめします。これは,「自分が今までどのような活動に従事してきたか (研究・教育・臨床・プライベートetc.)」という事実を書きだして,そこに通底する自分の価値観を見出し,プロとしての自分のミッションを明確化していくというものです。その上で,短期・中期・長期の具体的な到達目標を設定していきます。これらを文書にまとめたものがアカデミック・ポートフォリオと呼ばれます。
アカデミック・ポートフォリオを一度作成しておくと,「あの頃とどこがどう変わってきたか」を後から参照できるようになります。状況がどう変わったか,自分の価値観に変化はあるのか,目標設定を見直す必要はないか,などを簡単に振り返ることができます。いわば,自分のための「声明」や「念書」を作るということです。そういった拠り所があれば,「この先キャリアをどうするか」「自分はどうしたいか」という迷路にはまりづらくなります。
アカデミック・ポートフォリオは1日やそこらで作成できるものではないですが,「こう作ればよい」というガイドは確立しているので,作るのはそこまで苦にならないだろうと思います。私の場合は,2014年に東大の恩師が主催されていたワークショップに参加し,メンターにも手伝っていただきながら,3日間缶詰で作成しました (不思議と楽しい思い出しかありません)。このホームページに書いてある内容も,そのとき作成したポートフォリオの延長といえるものがほとんどです。
私はアカデミック・ポートフォリオの専門家ではありませんが,術語として確立しているぐらいなので,書籍や研修会などは探せばたくさん出てくることと思います。キャリア形成に悩んでいて,思考を整理するための具体的なステップが見えないという方は,情報をいろいろと当ってみると良いでしょう。